JBLでクラシックを聴く

ヤフーブログ終了で引っ越ししてきました。主にオーディオについてです。すでにオーディオ一式は断捨離で売り払ってしまいましたが、思い出のために引っ越しして残すことにしました。

ちょっと待って 「先進医療特約」目当ての保険加入

ちょっと待って 「先進医療特約」目当ての保険加入

「先進医療」とは、厚生労働省により承認された高度な医療技術のことで、今年の4月1日現在、88種類の医療技術が644医療機関で提供されています。ポイントは、診察料、検査料などは公的医療保険の対象となるのですが、技術料は患者さんの自己負担になるところにあります。

 営業現場では、がんに対する「重粒子線治療」などを例に引いたりすることが多いようです。

 「手術を行わないため体の負担が軽い上に、根治も見込める優れた治療法です。ところが、技術料はいくらだと思いますか?約300万円です。気軽には受けられないですよね。そこで『先進医療特約』です。こうした特別な医療にかかる費用を、たとえば1000万円の限度額までカバーします。ありがたいですよね?しかも安い!この特約を付加しても『医療保険』の保険料は100円も上がらないのですから、人気を集めるのもわかりますよね?」といった具合です。

 言っていることは間違っていません。ただ、私が残念なのは、現状、「先進医療特約」は、保険会社が「医療保険」への「新規加入」と「買い替え需要」を喚起する手段になっている感があることです。

 そもそも、すべての「先進医療」が100万円単位の費用を要するものではありません。厚生労働省の資料には「子宮頚部前がん病変のHPV-DNA診断」にかかる費用は1万2200円という報告も見られます。また平成18年度に、300万円前後の技術料がかかる粒子線治療が行われた件数は986件です。平成17年の「患者調査」では、がん患者数142万人とされていますから、あくまで推計ですが、がんにかかる人の0.07%くらいしか受けない治療と考えることも出来そうです。

 件数は今後も増えるはずですが、まだまだ限定的なケースであり、保険料が安い理由もそこにあるはずです。私は、保険金と掛け金の額がかけ離れているほど、保険の利用価値があると考えているので「先進医療特約」自体は良いものだと思います。

 しかし、この特約が付加されている「医療保険」は、各社とも、加入直後から手術を伴う入院を繰り返すようなことでもない限り、貯金をしていた方が賢いと思える保障内容にとどまっています。つまり基本的に保険料が高い商品なのです。お客様が「先進医療特約」目当てに「医療保険」に加入されるのは、疑問です。

 何より、新種の特約が注目されることで、既存の商品に対する「付加価値」を競う傾向が続くことを危惧します。私がお客様だったら「付加価値」競争よりも「価格競争」を望みたいからです。

 「人気の特約がわずか100円アップで・・」という案内の前に、「100円加算される前の基本料金は妥当なものだろうか? そもそも保険の原価や経費率は、見直されているのか?」という問いが繰り返されるべきです。携帯電話で言えば「機能が増えるより、使用料が安くなる方が嬉しい」というお客様の声があると思うのです。

後田亨(うしろだ・とおる)