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ヤフーブログ終了で引っ越ししてきました。主にオーディオについてです。すでにオーディオ一式は断捨離で売り払ってしまいましたが、思い出のために引っ越しして残すことにしました。

がん ~人類進化が生んだ病~

NHKスペシャル『病の起源』
2013-05-19 21:00 ~
第1集「がん ~人類進化が生んだ病~」から・・・。

現代病と思われているがん。しかしその歴史はかなり古く、アメリカで発見された1億5000万年前のディプロドクスの化石からも、骨の組織を崩したがんの痕跡が見つかっています。
近年の研究によれば、5億5000万年前の多細胞生物の出現から、がんの発生が始まったと考えられています。 多細胞生物は、細胞が寿命で失われると細胞分裂により、新たな細胞が補われるのですが、その際に細胞のコピーミスが生じることがあります (加齢により増加していきます)。 

このコピーミス細胞の一部はネクローシス (Necrosis)"細胞の自殺"で処理されますが、ごく一部が生き残り、がん細胞へと変異して増殖していくことになります。 しかし、生体の免疫の防御機構によって、この変異したがん細胞も破壊し駆逐されます。 

こうして、多細胞生物は、がん化・脱がんを繰り返しながら生存してゆくのですが、そのバランスを崩す因子が、進化と共に増加しているのです。 

蛇足ですが、僕はiPS細胞で、膵臓を強化する事が、がんを含めた多くの死因と長寿を克服できると期待しています。

さて、生物は多細胞化することでさまざまな機能を獲得し、バリエーションに富んだ進化を遂げるというメリットを得ましたが、その代償として、がんになる宿命を背負うことになりました。

多細胞生物の宿命であるがん。その中でも人類は特に大きいがんのリスクを背負っています。遺伝子の99%が同じという人類と共通の祖先、チンパンジーと較べても、ずば抜けて高いリスクです。

その違いは、精子が持つ遺伝子の変化にありました。人類は、700万年前に二足歩行を始めるようになって以降、絶えず精子が増殖していくように遺伝子を変化させていきましたが、がん細胞もそれと同じ仕組みを利用し、増殖できるようになっていったのです。

では、精子が絶えず増殖できるように変化していったのはなぜか。それは、人類の繁殖戦略の変化が原因だといいます。 チンパンジーは、繁殖期になるとメスの生殖器が肥大化するという目に見える変化が生じます。しかし、人類のメスにはそのような外見上の変化は見られなくなりました (その代り妊娠もしていないのに乳房の発育で代償を獲得しました)。 また、年サイクルの発情期から、年間通しての排卵 (生理)によりオスは交尾のタイミングがわからず、狩りをして得た食料をメスに与えつつ、ひんぱんに交尾をして子孫を増やし爆発的な数になりました。 この繁殖戦略の変化が、結果として人類ががんのリスクを高めた最初の要因となりました。

2つめの要因として、人類の脳の巨大化にありました。
人類は脳を大きくしていく過程で道具を生み出していき、やがては文明を築き上げていくことになります。
その脳の巨大化は、FASという脂肪酸を作り出す酵素がもたらしました。 人類のFASは、変異によって他の動物よりも多くの脂肪酸を作り出すことができ、それにより細胞が活発化します。 そのことで神経のネットワークが進化し、やがて脳も巨大化していきました。

ところが、がん細胞もFASによる細胞の活発化のメカニズムをも取り込むようになり、さらに増殖する力を持つようになってしまったのです。 生命の維持と進化のシステムを逆手に取る、「したたか」ともいえるがん細胞の進化ぶりには、驚嘆せざるを得ません。

人類ががんのリスクを高めた3つめの要因は、6万年前の「出アフリカ」にありました。
人口の増加により、日差しの強いアフリカを出て地球のあらゆるところへと移動していった人類。しかし、紫外線の弱いヨーロッパ・アジア・アメリカ等に住むようになったことから、紫外線により生成されるビタミンDが不足するようになり、それががんのリスクを高めるようになった、というのです。 紫外線は浴び過ぎても皮膚がんのリスクを高めますが、浴びなくなることもまた逆効果となるのです。

そして現代になって加わった、がんのリスクを高める要因のひとつが、ライフスタイルの変化でした。 近年発明された、電球の流通により夜勤に働く人たちが増加しましたが、それが、がんのリスクを高める事になったのです。 女性の場合は乳がんの、男性の場合は前立腺がんのリスクが高いとの疫学的報告がなされました。

それらの要因は、睡眠をつかさどる物質であるメラトニンの不足にあり、がんの増殖を抑制する働き低下があります。 夜間に電気の明るさの中にいることでメラトニンの生成が抑えられ、それによりがんリスクが高まることがわかってきました。

がんの起源とメカニズムが明るみになっていく中で、がん治療法も模索されてきています。 脂肪酸で細胞を活発化させるFASの研究をしている研究者により開発された「FAS阻害薬」は、FASのみをターゲットにしてその働きをブロック、がん細胞の増殖を抑え、死滅させるというもので、現在臨床試験中とのことですが、早く実用化されて大きな効果を期待したいです。

人類の進化と歩調を合わせるように増殖力を高めていったがんですが、がんの起源と歴史を研究する事から、がんに対抗する手段が生み出され、人類に福音をもたらす一因となり、決して他人事ではない病のリスクを抱える人間の一人として、注目をしていきたいと思います。